私の花図鑑     花の里日記   2001.1.3
         水曜日( 梢の風 )


   いよいよ21世紀に入ったがそんなに日常が変わるわけもない。
最近吉和にいっていないので、思い立ち出かけた。冬らしく道の途中から小雪がちらついてきた。吉和の山では日陰には雪が積もっていた。
 焚き火をしようとしたが湿ってつかない。風の吹かない谷で2年前の台風で倒伏した木をチェンソーで切断する。杉などはわりと柔らかいが楢などは乾燥して硬いので切断に骨がおれる。そばの倒れて横になっている水楢に乾燥したきのこが生えている。よく見るとしいたけだった。昨年の秋は暖かかったため遅くに発生したのだろう。自然は色々と変化する。過ぎてみないと判断出来ない。
 疲れて手を止めると時々強い風が吹いてざわざわと枝を鳴らす。また動物の鳴き声かと思うと枝と枝のこすれる音だ。寒さにキイキイと鳴いているようだ。体はいっぺんに寒く凍えてくる。

 頂上に登って休む事にする。空には灰色の雲が次から次へと、西の山から湧き出しては東の山に急ぎ足で通り過ぎ、その狭い隙間からは寒さで凍りきった空気が青い空を灰色がかった薄い水色に変えて見せてくれるが、すぐに流れる雲にさえぎられる。太陽はまるで姿を現さずぼんやりとした雲の光が地上に射している。
 隣の杉の林は森閑として暗く動かない。ときおり強風が吹きつけるとその枝先を震わすだけ。それでもかすかなシジュウカラの声が落葉樹の林から聞こえてくる。風がやむと静寂が訪れて私の耳鳴りだけが聞こえるが他にはまるで音もしない。
 尾根筋に時折疾風が吹くと落葉樹は枝全体を揺り動かされて、枝にしがみついた最後の枯葉をくるくると舞い落としてしまう。それでも枝先には秋には用意されている小さな春の芽が硬くしっかりとついており零下15度にも耐える強さを現してくれている。雪の中にはアナグマの足跡らしい丸い跡が一筋見えるだけだ。こんな時には6月の緑に輝く林の温かみがほしくなる。すべてが輝く時を!それはまるでやさしい人のぬくもりのようだ。


    さびしさに 絶えたる人の またもあれな
         庵ならべん 冬の山里
          西行

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