私の花図鑑    花の里日記   2002.8.1  31
           木曜日  星


   今日はなぜか、ざわざわとした暑い一日であった。
来客や電話の対応も落ち着かなかった。
その深夜には、なにものかに取り付かれたように吉和村へと一人向かっていた。
もう寝静まって明かりの消えた家並や月が出ていないので真っ暗な森を見ながら、車のヘッドライトをたよりにセンターラインの白線とガイドの反射ポールを道案内にゆっくりと車を走らせてた。
途中前部を大破して反転し路側に落ちている若者の車を見た。
4〜5人が暗い中立ち話をしている。
いつもの事だ等と考えながら対向車など1台もこない暗い田舎道を、またスローで走っていた。 

すると山ぎわに明るい光があちこちに見える。
あそこに家など無いがと思いながら車を止めて外に出ると、天空全部が宇宙に開かれた窓のようにあいて、数千の明るい星たちがじろりと私を見下した様な気がした。
思わず私はたじろぎそうになつた。
銀河も南北に横たわり、まるで小粒のダイヤを敷き詰めたように光輝いている。
ああ宇宙は冷たくて暗黒ではなく、わりと明るい所なのだな。
これなら死んで暗黒の世界に入り込んでも安心だなどと考えたりした。
電気の明かりが無いころに、星占いを信じたり、宇宙にその人の運命を決める星がある等という事を信じた人はこの様な経験をした人間だとも思った。


 又ゆっくり深夜の田舎道を走りだしたが空だけはあいかわらず明るく輝いていた。
昔子供たちと一緒にハイウエイを深夜走り、サービスエリアの蛍光灯に集まる虫を探した事もあったなあ等と考えながらいつのまにか吉和村に着いた。
道路照明灯や村の家の灯が見えて現実の世界に引き戻された気がした。
空にはベールのような薄い雲が北から流れ出し、もうあの星の輝きを二度と見えなくしてしまっていた。
それでも心残りな気がして、しばしの間暗い空を見上げている私であった。

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