私の花図鑑    花の里日記   2002.9.22 33
           土曜日  早朝目が覚めて


 いぬ

 犬の話はあまりしたくないが一つだけ話す。
今の犬はほとんどペット化しているので自然とそぐわない気がしている。
私は昔、庭で放し飼いして犬を飼っていた。
つなぐのは可愛そうに思うのであった。
また散歩をするのも嫌であった。
ところかまわず糞をするためだ。
しかし周辺が住宅地化し賑やかになると、
おのずとそうも行かなくなってしまった。
やがてその犬も死んでしまってからは飼うのを止めてしまった。

 あれは1昨年の12月の終わりごろで、
10センチ位雪の積もった日であった。
朝から山の上部で焚火をしながら森の手入れをしていた。
温度は0度位であまり寒くはなかったけれど、
昼前からチラチラと小雪になったかと思うとずんずん雪は降ってきた。
火のそばで昼食を取って休んでいると、
雪はもう20センチ位積もりあたり一面銀世界になって来た。
その銀世界の中に動く動物が見える。
よく見ると小型の犬だ。
先ほどからこの雪の山の中の薮を上ったり降りたりしている。
やがていなくなったかと思ったら彼は道をまた上がってきた。
「どうしたの?」私は思わず声をかけてしまった。
すると彼(雄と思うけど雌かも知れない。成長途中の小型犬だった。)
は火の側に黙って座りこんでしまった。
昼食の匂いを嗅いだのかも知れない。
私は弁当の残りを食べさせてやって考えた。
首に通信機みたいなアンテナ付きの古そうで重い物を首輪に付けている。
可愛そうに。
主人とはぐれてこんな山中に迷い犬になっているのか。
負担になっているのなら首輪をはずしてやろうと思い取りのけてやった。
それでも彼はじっとして火のそばで座っていた。

 しばらくそうしていたら雪の降り続く道を登ってくる人物がいる。
彼は60才位に見え帽子をかぶり手に猟銃をぶら下げている。
やがて彼は「ここにいたのか!」と言い今この下で猪を追いつめたが、
撃つタイミングをはずして逃がしてしまったと私に話した。
そこは穴熊の巣があり2カ所横穴が斜面にあいている所だ。
私も穴熊を撃たれては困るのでその事は話さないでいた。
彼は「おや通信機がはずれている。
どうしたんだろう?」と言った。
私も犬もしらばっくれて黙っていた。
やがて彼らは雪が降りしきる中、道を下って行き姿が見えなくなった。
私は彼(犬)の事を考えていた。
彼は初めての猟の生死のやりとりに、
ストレスが溜まって仕事をさぼってしまったのだろう。
経験も少ない幼犬で猟をするのは可愛そうだと思った。

 

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