私の花図鑑    花の里日記   2002.10.6 34
           日曜日  秋雨


 久しぶりに雨が降った。
黄金に実った稲田の上の電線にが集結している。
いよいよ南国に帰る時が来たのだろう。
早い鳥は3月の末には飛来してくるので6ヶ月も滞在している。
どちらが故郷かわからない。
たぶん生まれた国だろうから日本の鳥だ。
この鳥は野鳥らしくなく人になれなれしい。
春先に玄関のドアを明けておくと家の中まで入り込んでくる。
昔の土間のある大きな玄関の梁先などなら、
巣をかけても良いが最近の建物はそうはいかない。
早々に引き取って貰っている。
日本人の暮らしかたが変わってしまったが、
燕には簡単に理解しがたいらしい。

 今日は朝から曇の日だった。
森の手入れをしていると(最近は休日の日課となっている)
山では紅葉もしていない枯葉が足元に散ってくる。
真夏の日照りがきびしかったせいだろう。

 秋の低気圧が接近するとにわかに風が起こり、
最初は高い杉の梢が音を立てる。
そのうち森の雑木(ぞうき)にも風が吹きつけて
にわかにあたりが騒がしくなり、
やがて小さな雨が私の衣服を濡らしにくる。
しかしあまり冷たくないので無視して作業を続けていると、
やがて激しい雨が襲来してくる。
たまらずにいそぎ車の中に逃げ込む始末になる。
早くも紅葉したぬるでをその雨がぬらすと、
朱色がいっそうあでやかになり、
また紅葉もしていない大もみじの葉は、
ようやく元気を取り戻しその緑を輝かせて、
去りゆく夏をなごりおしんでいるようだ。
私にとっては、さざなみのように雨が降り、
あたりが白くかすむ時も
美しく感じてなぜか心休まる。
草木(くさき)も土も空気までもが、
秋の紅潮したその一瞬を迎えようと待っている。

 

日記前のページへ  日記次のページへ 日記の最初の目次ページへ   花図鑑ホーム